今こそSD-WANへの移行を始めるタイミングです

最近のマッキンゼー社の報告によると、新型コロナウィルスのパンデミックにより、デジタルテクノロジーの取り組みはますます加速しているということです。そしてDX(デジタルトランスフォーメーション)にとって欠かせないのがネットワークの安定性、セキュリティ、およびパフォーマンスで、それこそがSD-WANが注目される背景でもあります。

多くの企業が業務やアプリケーションをIaaSやSaaSに移行し始めたため、従来のWANは適応しなくなっています。デジタル化に取り組む各企業は、アクセスの柔軟性、広帯域幅、エンドツーエンドセキュリティ、マルチクラウドに対応する質の高いUX(ユーザー体験)などの理由からSD-WANを選択しています。

ただしSD-WANへの移行は、ネットワークをアップグレードすればよいというものではありません。アプリケーションパフォーマンスからマルチクラウドコネクティビティ(接続性)などインフラに関する各種設定が必要なため、完全な移行(トランスフォーメーション)が必要です。さらにSD-WANへの移行には、その企業全体のコミットメントとして取り組むことが必要です。

そして言うまでもありませんが、SD-WANには実にたくさんの種類があります。オーケストレーションや互換性の問題を発生させないためにも、適切なプロバイダーとソリューションの選定が必須です。

企業のアップグレードがどうしても必要な理由

IDC社のSD-WANテクノロジーに関する最近の発表によると、SD-WANの勢いは依然として続いており、企業の95%は2年以内にSD-WANを導入する予定だと回答しています。企業はビジネスレジリエンスの強化と、急速に進化しているデジタル経済への対応を検討しているため、SD-WANの導入はさらに高まると見ています。

またIDC社は、次のように提言しています。「SD-WANへの移行を検討している全ての企業は、既存のWANをコネクティビティ含め、今後のビジネスニーズと照らし合わせて広範の見直しが必要です。その上で、SD-WANを導入することで得られるメリットを十分に把握、認識しなければなりません。」

初期にSD-WANを採用した企業は、SD-WANによるコスト削減を重要視していました。当時は、SD-WANによってMPLSと比較的安価なブロードバンド接続とのバランスを取りつつ予算配分の調整ができたのが、その理由です。

しかしSD-WAN導入の先駆者たちは、IDC社の調査の通り、もっと重大で革新的なメリットがあると報告しています。例えば、ビジネスアプリケーションへの確実なアクセスが一つです。これによって全体的な生産性が向上、ビジネスチャンス獲得の柔軟性が高まり、それにより新たな企業収益源をもたらすようになります。また、ユーザーがどこからでもクラウドにアクセスできるようなり、マルチクラウドアプリケーションへのアクセスが飛躍的に向上、加えてソフトウェア型の自動化によってITネットワーク管理に関する人件費の削減にも貢献します。

ミッションクリティカルな資産やトラフィックを分割して保護することができる機能も、導入を検討している企業にとっては魅力的な要素です。例えばCisco SD-WANは、社内、クラウドを問わずWANを分割できる機能で知られており、複合的なグローバル企業にとって理想的な選択肢です。

シーメンス社はグローバルなSD-WAN移行プロジェクトの重要な節目に到達

シーメンス社は自社のSiemens Digitalization Network(SDN)の中心にSD-WANを据え、ITインフラの強化と自社全体におけるネットワークパフォーマンスの向上を図っています。ここにはコミュニケーション機能と連携した一元管理されるクラウドコントロールが含まれ、顧客はコストを削減しつつ、柔軟性とパフォーマンスを改善することができます。またこのシステムでは、グローバル企業がデジタル化の高度なテクノロジーを活用することができるため、インダストリー4.0のプロセス推進にもつながります。

また柔軟性の高いSD-WANは、シーメンス社の基盤である「ゼロトラスト」セキュリティフレームワークを提供、場所を問わず接続を試みるすべてのデバイスを認証・承認することでセキュリティのレベルを引き上げます。これによりシーメンス社は、インフラ全体におけるリスクを効率的に低減、そしてインシデントの検知と素早い対応ができるようになります。

SD-WANネットワークに接続されているシーメンス社の各オフィスは、柔軟性やアジリティの向上など、すでにこの新しいシステムによるメリットを実感しています。また、帯域幅の効率的な活用により、セキュリティレベルを下げずに、クリティカルなアプリケーションに対する高いパフォーマンスの維持ができていることも大きなメリットです。

ネットワークの高いレベルでの可視化、アップグレードが必要な個所の発見も早くなり、常にコネクティビティを最適化することができます。

SD-WANへの移行計画を策定する

現在DX成功へのカギを握っているのはSD―WANです。企業は、SD-WAN導入に向けたビジネスケース(投資効果の検討書)を作成する必要があります。ただし始める前には、ビジネスゴールや広範なデジタルゴールと企業戦略との整合性の精査、関係部署との綿密な確認、協議などをお勧めします。つまり、ITチームだけでなく、ビジネスユニットや企業内ユーザーのニーズなども全てを理解する必要があるということです。

また、アプリケーションパフォーマンスのベースライン作成などSD-WANソリューションの対象範囲を定義することも必要です。ネットワーク上で動作させている状況を正確に把握するには、検出ツールの設置も必要です。

企業のネットワークにおいてセキュリティは重要な役割を担っています。もちろんSD-WAN設計にもセキュリティは必要不可欠な要件です。IDC社は、SD-WANプロバイダーを選択する際にはプロバイダーのセキュリティに関する能力を重視するべきだとアドバイスしています。Ciscoは、SD-WAN用の完全一体型セキュリティスタックを提供、Cisco Umbrella Secure Internet Gatewayクラウドセキュリティなどが含まれており、お客様はSecure Access Service Edge(SASE)アーキテクチャを段階的に実装できるようになっています。

スムーズな移行

ネットワークの移行は時間を要するだけでなく、事業に重大な影響を与えるリスクを伴います。試行段階ではさまざまな種類の状況を想定してテストを行います。それにより、企業が実際に使用するネットワークの種類やアプリケーションの双方に対してSD-WANの影響を見ることができます。テスト段階で詳しく調べれば、それだけSD-WAN本格稼働時の信頼性が高まります。また広範に展開する前に、今後生じる可能性のある問題を事前に解決することも可能になります。

ネットワークはデジタルビジネスの屋台骨のようなものです。移行作業はできるだけスムーズかつシームレスに行う必要があります。しかしSD-WANソリューションはすべて異なる特徴を持っています。IDC社は、SD-WANプロバイダーの選択時には製品ポートフォリオ、導入モデル、追跡記録、ソーシング戦略などを精査し、これらが自社の目的に合っているかどうか、移行要件を満たしているかなどをしっかりと確認するよう推奨しています。

SD-WANは実にダイナミックなテクノロジーです。一旦SD-WANが稼働始めれば業務が停止することはありません。高いレジリエンス、アジリティ、柔軟性を達成するためも、SD-WANにはエンドツーエンドのモニタリングと完璧なライフサイクルマネジメントが必要です。これによってソリューションの技術的な整合性を維持、機能し、パフォーマンスを徐々に高めていくためです。

始めるなら今です

SD-WANへの移行にまだ着手していない企業は、今が開始するタイミングだと考えてください。SD-WANへの移行は一朝一夕では終わりませんし、企業の規模によっては、しばらくの間SD-WANとWANの両方を稼働させなければならないかもしれません。しかしSD-WANは、クラウドベースの戦略を推進するための強力なバックボーンを与えてくれます。そしてみなさんが必要としているマルチクラウドアーキテクチャを実現してくれるのです。

Steve Harris

I’ve been writing about technology for around 15 years and today focus mainly on all things telecoms - next generation networks, mobile, cloud computing and plenty more. For Futurity Media I am based in the Asia-Pacific region and keep a close eye on all things tech happening in that exciting part of the world.