建設プロジェクトのコスト予想を改善する
数年前のマッキンゼー社の推定によると、建設業界におけるいわゆる「巨大」プロジェクトの98%は30%以上の予算超過があり、また4分の3は40%の遅延があったということです。これらの予算超過の原因は、技術的な問題の場合が多く、対象範囲の変更、クライアント、請負業者、下請け業者間の意見の不一致、人件費や材料費の値上がり、不正確な予想、および監視不足などです。
このように期限を守らないことで有名になってしまった建設プロジェクトですが、この問題に対してデジタルは何ができるのでしょうか?まずインターネットに接続されるIoTデバイスは、プロジェクトの進捗追跡をすることで建設会社をサポートすることができます。例えばインターネットに接続されたセンサー付きのHi-Vis(高視認性)ベストやヘルメットなど、ウェアラブル技術を現場の労働者に着用してもらいます。これにより建設会社は従業員の動作を追跡し、チームが効率的に仕事を進めるように管理することができます。また、IoT対応の管理システムを利用して、資材が建築現場に配送される状況を追跡することで、スケジュール通りに作業を進め、さらにコスト削減にも役立ちます。
デジタルツインもまた、建設会社に恩恵をもたらす可能性のあるツールです。建築前の建設物に対するデジタルツインを構築すれば、設計の試行、計画内容のシミュレーション、作業プロセスの微調整などを、建設工事を実際に始める前に行うことができるのです。効率性を確保し、プロジェクトを軌道に乗せ、経費を抑えるには、最善の方法と言えるでしょう。
テクノロジーで泥棒を捕まえる
IoT対応センサーやデジタル追跡ツールは、盗難の問題解決にも役立ちます。保険会社のAllianz Cornhill社によると、建設現場で発生する盗難事件は、2013年から2018年までに55%増加しており、イギリスの建設業界の損失は年間8億ポンドになるということです。その後も新型コロナウィルスによってロックダウンが実施され、現場が無人状態になったため、盗難はさらに増え、イギリスのCEA(Construction Equipment Association)の報告によると、盗難事件は約50%増加したということです。デジタルによる資産追跡機能があれば、建設会社はこれらの盗難事件を軽減させることができます。
建設現場の衛生面と安全面を改革する
イギリス安全衛生庁によると、2019年にイギリスの建設業界で発生した死亡災害は30件、非死亡労働災害は54,000件でした。非死亡労働災害には、転倒・落下による怪我、落下あるいは飛んできた物に当たって発生した傷害、または現場において物を持ち上げる、または運搬中に発生した事故などが含まれます。テクノロジーはこれらの数字を下げるお手伝いをします。
IoTやセンサーは、建設現場の事故を減らす可能性を持っています。労働者と現場監督を繋げてプラットフォームを監視することで、デジタルが現場の安全性を高める方法はいくつもあります。例えば、労働者の作業着、ヘルメット、その他のウェアラブルデバイスなどに設置されたセンサーで建設現場にある危険物を監視します。または、労働者が危険なエリアに侵入した際にアラートを出す監視センサーもあります。
さらに、現場周辺の潜在的危険エリアにおけるノイズ、振動、動きを追跡するIoTセンサーによって安全性を高めることもできます。データ分析ツールは、現場の過去のデータを分析し、環境的な問題または現場の問題が原因で起こり得る損傷などを予測し、さらに現場での事故に速やかに対応します。IoTの接続があれば、以前はなかった有益なデータにアクセスすることができるため、建築業者は現場での課題を予測・予防し、事故管理にかかる費用を抑えることができるようになります。
スマートツールでスマートな新しい結果を生み出す
現在では、世界各国の建設会社がIoTツール、デジタル、およびデータを活用して作業の向上を図っています。オーストラリアでは、建設、エンジニアリング、貿易コンサルタント等の企業がテクノロジープロバイダーと提携するケースが増えており、スマートソリューションの相互開発を行っています。例えばオーストラリアの大手建設会社でありエンジニアリング・コンサルティングサービス会社のGHDはオレンジと提携し、「コネクテッドオブジェクト」(インターネットに接続されたモノ)と言われる「サービスとしてのIoT(IoTaaS)」のプラットフォーム開発を共同で行っています。このプロジェクトから得られるメリットは、現場の資材や資産の移動をリアルタイムで追跡できること、現場にいる多くの人を監視できること、そして物流の最適化、盗難の検知、在庫の維持、リスクの低減に役立つデータを建設会社に提供できることです。
またオレンジは、大手建設会社マッコーネル・ダウエル社と連携して、カスタマイズおよび拡張可能なスマートIoTソリューションを開発しており、重機の使用状況や資産の追跡などのリアルタイムな情報を現場で回収および報告できるようにします。このソリューションによりマッコーネル・ダウエル社は、作業効率に関する意思決定を情報に基づいて行うようになるため、時間と費用の節約が可能になります。
他にも建築スペシャリストであるアラップ社との例があります。アラップ社は、建物の省エネを実現し、さらにその居住者の健康と安全を重視した快適な屋内環境を提供する「デジタルブレイン」と言われる「Neuron」を開発しました。このシステムが活用するプラットフォームは、ビルディングインフォメーションモデリング(BIM)とIoTおよび分析プラットフォームを、クラウドベースのセントラル管理コンソールにまとめて、建物にあるばらばらのシステムや機器類を繋げます。
オレンジオーストラリアの取締役ケビン・グリフェンは次のように述べています。「デジタルツール、データ、そしてIoTは、建設会社に大きな利益をもたらす可能性があります。資産の追跡、盗難の減少、または労働者のための現場の安全性向上など、いずれのケースもテクノロジーが改革を起こし、それまでは想像もつかなかったモノを現場に与えてくれるのです。その結果、建設会社の労災事故件数は減り、予算を抑えたプロジェクトが可能になり、予算超過も少なくなります。またデジタルは拡張可能なため、デジタルツールは、建設プロジェクトの規模にかかわらず活用することができます。新しい工場から、空港、住宅団地まで、デジタルは建設工事をレベルアップしてくれます。」
テクノロジーが従来の建設業界を変える
データとデジタルツールにより、建設業界には以下のような変化が起きています。KPMGによると、建設会社の95%は、「新しい技術によってこの業界は根本的に変わるだろう」と考えています。またPwCによると、建設会社の98%は、デジタルツールによって12%の効率アップを期待しているということです。予算超過や高額な機器類、スキルの高い労働者不足、プロジェクトの短納期化などで知られるこの業界にIoTツールを導入することで、建設会社はリアルタイムのデータを活用し、成功への道を進むことができるのです。
オレンジビジネスがマッコーネル・ダウエル社のスマートな建設現場構築をどのようにサポートしたかはこちら、またIoTがどのように建設業界に変革をもたらすかについてはこちらをご覧ください。
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