建設業は、新しいデジタルツールや技術の採用が常に遅い業界でした。そしてこれが成長に影響を与えていることは間違いありません。マッキンゼー社のReinventing Constructionレポートによると、建設業界の過去20年間における生産性の伸び率はわずか1%ということです。これに対する費用は全世界で年間1兆3000億ドルです。
建設業界にもいくつかの技術によって既に有形資産価値が生まれています。例えば、ビルディングインフォメーションモデリング(BIM)により、建設会社は建築物を3Dデジタルで表現できるようになりました。これにより費用や資源の節約、効率の向上、プロジェクトの短期化、通信の改善、プロジェクトの調整、モジュール建築の増加、また品質向上など、多くのメリットを生み出しています。BIMでは、過去のデータや予想を活用し、これまでよりも正確に計画や予想を立てます。これまでの青焼き図面では不可能な作業です。
建設工事のインターネット接続を実現するためにデジタルができること
IoTも建設工事において大きな役割を果たし始めています。例えばIoT対応のデバイスやセンサーを使って、生産性、作業効率、そして現場の安全性を向上しています。センサーは現場の可視化を改善し、建設プロジェクト全体における生産性を向上します。
工事用のIoTソリューションの例としては、無人航空機(UAV)、無人トラック、ウェアラブルデバイス、鋳造時に圧縮強度を計るためコンクリートに埋め込むIoTセンサーなどがあります。IoTは、建設プロセスの間だけでなく、製造、エンジニアリング、調達から建設工事、保守プロセスまで役立ちます。
ARは、3DモデリングやBIM、デジタルツインを使った安全性テストなど、視覚的な確認を可能にします。また、作業員に対して安全性の高い研修環境やバーチャルの現地検証などをARでシミュレーションすることで、プロジェクト進捗の安全監視ができるようになります。
作業場用ロボット
IoTはロボット工学にも適用されます。人工知能(AI)のDoxel社は、工事現場を巡回し、進行中の建設プロジェクトの状況をチェックするロボットを設計しました。このロボットはデータを収集・解析して、問題となり得る個所を早い段階で見つけます。建設プロセスの中で使用されているロボットもあります。例えば長いアームのレンガ作業ロボットは、人間の3倍の速さでレンガを積み上げます。これらのロボットもデータを活用して、風による動きや振動など、現場の変化をリアルタイムで予測することができます。
建設プロジェクトの初期には、ロボットを使用して現場の調査および検査をすることができます。航空機ドローンや地上走行ロボットは、工事現場からデータを収集し、コントロールセンターへ動画を送り、現場監督が実際に工事を始める前に現場の状況を把握できるようになるのです。現在、工事用ロボットは躍進を続けており、建設業界のロボット市場は2027年までに79億ドル、2020年から2027年までのCAGR(年平均成長率)は23.3%になると予想されています。
建設現場において明確なのは、リアルタイムデータ、IoT、およびその他のデジタルツールは、インフラを繋ぐポテンシャルがあるということです。例えば建物から橋まで、坑道からトンネルまでなど、それぞれの状況を把握することで、生産性、効率、安全性の向上につながるのです。
建築工事における5Gの可能性
5Gのモバイル接続により、建設業界のデジタル改革を次の段階へ進めることができます。BIMやAR、その他のツールを身に着ける「拡張型作業員」は、これまで以上に情報に基づいた作業を行い、生産性を向上することができます。また5Gの超高速かつ低遅延という特徴によって、ホログラフィックによる建築物の可視化、リアルタイムの設計表示、そして現場におけるデータへの即時アクセスなど、新しいソリューションが提供されます。
例えば、自律走行車(AV)が資材を現場へ夜中に届けて指定の場所に設置し、翌日即使用できるようになる可能性もあります。またARまたはVRゴーグルを着用した掘削機のオペレーターは、指定された掘削個所の3Dモデルを使用しながら作業をすることができます。ドローンやセンサーがあれば、現場監督はリアルタイムで作業を監視できるため、現場に立ち会う必要がなくなります。
建設エコシステムのサポート
インターネット接続「コネクテッド」の可能性を最大限に引き出すことで、建設業界は、データや分析に基づくダイナミックで常時稼働可能な建設エコシステムを生み出すことができます。しかし建設のエコシステムは複雑なため、他の業界のようにはいきません。コンサルタント企業、請負業者、その他のサプライヤが、そのプロジェクトのためだけにチームを組み、将来的に全く同じチームが組まれる可能性はほとんどないため、同じプロジェクトやプロトタイプは存在しないのです。
そのため建設エコシステムは、建設プロジェクトのさまざまなエレメントに対応する多くの調達システムで構成されます。第一段階として、設計コンサルタントのようなサプライヤがクライアントに直接対応します。この段階を過ぎると、サプライチェーンを構成する下請け業者や専門業者の各サプライヤなど、エコシステムは一気に複数の請負業者に分かれていきます。
大規模で複雑なプロジェクトの場合、責任や作業の履行は、サプライチェーンに沿った多くのサプライヤまで伸びているため、そのチェーンのトップにいるプロジェクト管理者はすべてを見ることはできません。予算の間違いや、承認、下請け業者のスケジュールなどは特に、建設プロジェクトにおいて遅延の原因となりがちで、簡単に理由を見つけることはできません。
マッキンゼー社によると、建設プロジェクトは通常、当初の予定より20%遅延し、予算は最大で80%超過するということです。サプライチェーンの問題による遅延が原因で発生する費用は、平均でプロジェクト費用の20%~30%です。遅延は非常に高くつくということです。
データが可視性と効率性を高める
データは、コラボレーションベースの建設エコシステムの方向に働くため、遅延を事前に防ぎ、費用を抑えることができます。例えば、IoT技術を取り入れたスマートビルディングやインフラは、建設業のバリューチェーンを分析するためのデータを入手しやすくするため、パフォーマンスに基づいた共同での請負など、効率向上のための新たな手段を生み出します。
共同イノベーション(Co-innovation)も本領を発揮するでしょう。例えばサプライチェーンの中のサプライヤがBIMを利用してデジタルツインを作成すると、プロジェクトの早い段階でスケジュールと費用のモデルを作ることができます。またバリューチェーン全体のデータ分析と連携が実現すれば、従来のエンジニアリングから調達、建築までのアプローチを変えることができます。スマートサプライチェーンは、全体の機動性を高め、さらに意思決定の精度も向上することができるのです。
このようなテクノロジーイノベーションは、建設業界のビジネスモデルやバリューチェーンの関係性を劇的に改革します。コネクテッドデジタルやデータの活用は、エコシステムをベースに考えたプロセスの継続的な改善を実現します。オレンジはこの分野のエキスパートです。中東においてはメインのシステムインテグレーターとしてスマートシティ建設の主要プロジェクトを手掛け、またオレンジのEngage 2025においては、価値を見出せるエコシステムの提供をコミットメントの1つとして挙げています。
デジタル技術が従来の建設業界をコネクテッド建設業界にどのように変えられるのかについては、マッコーネル・ダウエル社と同社の革新的なIoT対応建設変革プロジェクトに関するグローバルデータに関する意見書をご覧ください。
I’ve been writing about technology for around 15 years and today focus mainly on all things telecoms - next generation networks, mobile, cloud computing and plenty more. For Futurity Media I am based in the Asia-Pacific region and keep a close eye on all things tech happening in that exciting part of the world.